2010年1月20日水曜日
外山滋比古2009『忘却の整理学』を読む
帯にある「『思考の整理学』待望の続編!」という文句に惹かれて買ってしまいました。
『思考の整理学』はとても良い本で、参考になる箇所が多くあったので、その続編はいかなるものなのかと期待に胸をふくらませていたのです。
結論から言うと、いささか残念でした。期待外れと言っても過言ではありません。
本書は3部構成になっており、そのそれぞれに10頁弱のエッセイが8本前後おさめられています。まえがきにもあるように、「忘却論ではなく、忘却をめぐるエッセイを集めたもので、一篇一篇は、ほぼ独立している」形態をとっています。
したがって、前節における結論が後節における前提となるといった論理展開はなく、ただつらつらと「忘却」をめぐるあれこれを述べていくという形で本書は展開しているのです。
この形が悪いというわけではないのですが、正直に言って私にはとても退屈なものでした。「記憶とともに忘却も大切にしないと知的活動に支障をきたす」という主張がありとあらゆるところに繰り返しでてくるので辟易としてしまいました。
確かに「忘却」というこれまで軽視されてきた知的活動の一側面に光りを当てる興味深い試みではあったと評価することはできます。ただ、それにもかかわらず脳科学的な裏付けなどがなかった点は残念でした。
あまり期待しすぎると肩すかしをくうという好例でした。
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