2010年2月28日日曜日

能動的読書のために


迷宮入りするかに思えた写真整理も一段落したことで、本日は穏やかな休日を送っていました。

こんな日は一日中、本を読むのが私の楽しみのひとつです。

本の読み方というのも十人十色でしょうから、ここで私なりの本の読み方を紹介したいと思います。

多くの人と同様、私も読書技術を日々磨いていまして、新たな手法を取り入れるなど様々な工夫をしています。紆余曲折を経て、現在はこの方法がベストというものを編み出すに至りましたが、この方法もいつまで続くのかは分かりません。

私の読書技術の大きな特色の一つは、書き込みをせずに、付箋を使うというものです。

一時期は本の余白に重要点や疑問点などをこれでもかと書き込んでいたのですが、この書き込み法がもつ様々な弱点に気づき、そっとペンを置きました。

私が思う書き込み法の弱点はいくつかあります。
1つ目は、いつでも書き込めるとは限らないことです。机の上で本を読んでいるときは書き込むのが容易だと思うのですが、満員電車の中や就寝前のベッドの中では、本を読むことはできてもそこにアイデアを書き込むのは困難を伴います。本の内容を咀嚼し、思考を整理するために書き込むのに、場所によってはそれを行えないというのでは本末転倒なような気がします。

2つ目は、書き込まれた情報が本とともに本棚に入ってしまうため、着想やアイデアを整理しづらいことです。せっかく本の内容に触発されて素晴らしいアイデアが浮かんでも、それを効果的に整理・活用しないと無駄になりかねません。さらに、書き込みがあるのかないのかすら外見から分からないのでは、何年か経ったあとに「俺はこの時こんなことを考えていたのか・・・」という思い出にしかならないのではないでしょうか。

他にも細かい点はいくつかありますが、大きな弱点はこれぐらいです。

では、私の考える効果的な読書技術とはどのようなものなのか。

持ち物はなにもいりません。
必要なのは、前もって表紙の裏に付箋(ナイロンで半分透明のものがベスト)を20枚ほど貼付けておくことだけです。

あとは読み進めていって、気になるところがあればその箇所に付箋をはる。この繰り返しです。

読了したのちは、表紙裏の余った付箋を回収し、しばし置いておきます。

時間ができたときには、この本の付箋が貼られた部分を再び読み、該当箇所の抜き出しおよび着想をEvernoteに記していきます。
本一冊分をノート一つに対応させることもあれば、アイデア一つに対してノートを一つ作成することもあります。
Evernoteを使うことによって、着想を一元管理しながら、著書とのリンクは外さないということが可能になるのです。

この手法のミソは、読んでから時間を置いて記録をとることだと思います。
ある程度時間を経過させることによって、読了後の興奮状態ではなく、かなり冷静な視点で著書に当たることができます。

私の家には今数えたところ、Evernote入力待ちの本が約40冊あり、入力が完了して売却待ちのものが約10冊あります。
かなり溜まってきているので、近いうちに時間を見つけて一気に打ち込みたいと考えています。

方法は人それぞれ様々あるのでしょうが、一番まずいのが読んだら読みっぱなしという態度だと思います。
読書というのはある意味では受動的な知的活動でしょう。しかし、その内容をいかに自分のものにするか、いかに発想を広げていくかという能動的な態度を持つことは可能ですし、そのような態度を持って臨まないと、本は急にそっけない一面を見せるような気がします。自分なりの読書技術を構築することによって、能動的な態度で読書を行えるようになり、自分の大きな糧とできるのではないでしょうか。

2010年2月27日土曜日

Dropboxを使ったiPhotoの同期を断念する


最近はデジタルカメラが普及してきたこともあって、多くの人が気軽に写真を撮るようになってきています。私もデジタル一眼レフを持っており、公私を問わず写真を撮る機会が多くあります。

さて、今回は取りためた膨大なデジタル写真をいかにして保存・管理するかという問題を考えたいと思います。

私の写真データの総量は約13GBです。写真は他の作業で使うファイルとは異なり、基本的に削除することがないので、データの総量は時間とともに増える一方です。

これまではDropboxのPhotoフォルダの中にイベントごとにサブフォルダを作成して、全ての写真をそこに入れていました。Dropboxはバックアップをネット上に残すとともに、もしそれが消えても遡って復元できるので、これでも保存・管理については充分なのですが、活用という側面から考えると充分とは言い難いのです。

そこで、様々なネット上の偉人の意見を参考に、iPhotoとDropboxを併用してみようと思い立ちました。「人々」や「撮影地」といった他には無い優れた機能を有したビュワーであるiPhotoを使わないというのは宝の持ち腐れであると考えたのです。Dropboxは保存には適しているのですが、ビュワーとしてはお世辞にも高機能とは言い難いのが現状です。

iPhotoとDropboxを併用することは、その両者の良いところをつまみ食いすることを意味します。つまりデータ本体はDropbox上に置いておいて、それをiPhotoによって活用するという手法です。

やり方は非常に簡単だと思っていたのですが、なかなかどうして、これがうまくいきません。何か設定のミスでもあったのでしょうか。いずれにせよ、私には原因は不明です。
「iPhoto Libraly」をDropbox内に作り、それに全ての写真を入れ、MacでiPhotoを立ち上げる際にそのDropbox内のLibraly を参照するように設定しました。しかし、同期されるものが一部ある一方で、同期されないものも数多くあるようです。さらに細かい修正を一方で加えても、もう一方のMacには反映されないという事もありました。

便利かと思って試してみたのですが、今回はあきらめることにします。

とりあえず現状ではDropboxにすべての写真を入れておいて、母艦である自宅のiMacのiPhotoをビュワーとして用いるのが妥協案です。このiPhotoを常に立ち上げておけば、MacBookからでもライブラリの共有機能を用いることによってiPhotoを使うことができるでしょう。正直私はそこまで、過去の写真ファイルを頻繁には見ないのでこの方法でも充分と言えなくもありません。もっとヘビーに使う方々はどのように写真を整理しているのでしょうか。

2010年2月26日金曜日

あえてScanSnapからEvernoteへは転送しない


ScanSnapは大変便利なドキュメントスキャナです。かなりのヒット商品のようですし、私も非常に重宝しています。

ScanSnapとEvernoteの連関性は強力で、読み込んだ書類を自動的にOCR認識して、それをEvernoteに取り込むという作業をワンタッチでやってくれたりもします。

この方法を使うと、とても速く書類が整理できるためEvernote使いとしてうれしい限りなのですが、いくつかの問題点があり、過去に使っていたこの手法は現在では多くの場合で使っていません。

その問題点は2つあります。

1つは、容量の問題です。私はあまり詳しくないので、理由はよく分からないのですが、ScanSnapでOCR認識したPDFファイルは少し重いようです。毎月容量限度との戦いを強いられている私にとっては、ファイルの容量はとても大きな問題なのです。また、Evernoteには1ファイル25MB以下という制限もありますから、重いPDFファイルの扱いに困っている人は私だけではないでしょう。

そこで私が採用した解決法は、AdobeのAcrobatを使うというものです。OCR認識をScanSnapではなく、Acrobatで行うのです。

ScanSnapで普通にスキャンしてPDF化したのちに、AcrobatでOCR認識を行うと、ScanSnapで行ったものよりも3割から6割ほど軽いPDFファイルができあがります。これをEvernoteに入れるのです。この手法はScanSnapから直接取り込むよりも一手間かかるのが唯一の難点ですが、これまで重くてEvernoteに入れることができなかったPDFファイルが入れられるようになるのであれば、これぐらいの手間を惜むべきではないでしょう。

2つめの問題点は、縦書き文書の取り扱いです。ScanSnapのOCR認識では縦書きの文章を検索でひっかけることが難しいようです。Acrobatでは文書が縦書きでも横書きでも問題なく読み取ってくれるので重宝しています。

AcrobatによるOCR認識は確かに時間がかかるのですが、「OCRを使用して複数のファイルのテキストを認識」というコマンドがあり、一気に作業を終わらせることができるので、就寝時などMacを長時間使わない際にその作業を行えば、それほど苦痛にはならないと思います。

かく言う私も、数枚しかない紙資料をスキャンする際は、ScanSnapのOCR認識を使っています。

しかし、重いファイルを扱う際には他にも方法があるという事はおいて損はないと思います。
Evernoteに入れるPDFファイルの容量でお困りであれば、是非一度試してみてはいかがでしょうか。

2010年2月25日木曜日

現時点での私のEvernoteの使い方


昨日に、大勢で各人のEvernote使用法を共有することを提案したので、ここで私も自分の現時点での使用法を示しておきたいと思います。

Evernoteの使い方はつまるところ、何を入れるのか、そしてノートブックとタグをいかに整理するのかという2点に集約されるのではないでしょうか。もっと大きく捉えれば、インプットの仕方やScanSnapの使い方のような話にもなるのでしょうが、とりあえず今回は省略することにします。

まず、Evernoteに何を入れるのか。

これは個々人によって多少異なると思います。ネットで見てみると、タスク管理として用いている方や、画像のファイルの整理として使う方もおられるようです。私は主に自身の研究活動のためにEvernoteを使っているので、入れるものは論文のPDFファイル(数が非常に多く、重いため苦労します)、アイデアメモ、データメモ、図版資料のJPGファイルが主です。自身が取ったノートや学会の配布資料などはスキャンして全て入れていますし、興味深いウェブクリップも入れています。また備忘録として忘れるべきでないメールの内容や大学の掲示なども入れています。

タスク管理として使うこともできるのでしょうが、これにはToodledoを使っていまして、現時点では不満は特にないのでEvernoteは研究活動に特化した使い方をしています。


つぎに、ノートブックとタグをいかに使うのか。
これには大きく分けて3パターンの使い方があるでしょう。つまり、ノートブック中心派とタグ中心派、および両使い派に分かれると思います。私はこの中では、タグ中心派に位置します。

私はノートブックは2つしか作っていません。その名も"Sync Notebook"と"Local Notebook"です。本当は"Sync Notebook"一本にしたいのですが、私は毎月Evernoteの月容量500MBを使い果たすので、ほぼ使い果たしたあとにアップロード待ちのノートを入れるスペースとして"Local Notebook"を置いているのです。月が変わりEvernoteの容量がリセットされると、私は"Local Notebook"の中から約490MBのノートを選択して、それらを"Sync Notebook"に移すわけです。

ノートの分類はすべてタグで行います。ノートブック分類を使わない理由の一つが、分野横断的な内容のノートをどこに入れるのかで迷いが生じることです。ある程度適当に入れておいて、あとは検索して探すというのも一つの手段なのでしょうが、そうするとEvernoteの良い点である情報を一覧することが難しくなると思うのです。また、タグの階層化も使いません。その理由は下部概念のタグを付ける際に、一つのノートにその下部タグを包括する上部タグを付ける必要が生じるからです。自動でやってくれれば良いのですが、手動でやるのはどうも面倒なのです。タグの数が約30個という少ない数なので、現時点では階層化してまで整理する必要性は感じていません。

タグは主にジャンル名で付けています。似たようなジャンルは頭文字に同じマークを付けることで、うまく配列されるように留意しています。タグがアルファベット順でなくて、自由に並び替えできればもっと便利だと思うですが、現時点では難しいようです。

あとはひたすらノートにタグを付けていく作業を行うのみです。私はタグ単位で閲覧することが多いので、タグを付ける際にもノートの内容が少しでもタグの領域にかするようならそのタグをつけることにしています。多くの情報を一覧することによって発生する知的化学反応を楽しみにしているというのも、このタグ中心派の言い分なわけです。

タグ中心派の最右翼、ノートブック不要派の弱点に先日気づいたので、それを加えて筆を置きたいと思います。それは、iPhoneでEvernoteのオフライン機能が使えないことです。この機能はノートブック単位でどれをオフラインにするか決めるものなので、大量のデータを一つのノートブックに集中させている私はこの機能を利用できないようです。iPhoneが圏外の場所でもノートを閲覧できないのは残念ですが、仕方ないですね。

2010年2月24日水曜日

Evernoteの個人的使い方を発信すること


最近Evernoteをめぐって、ネット上で様々な動きがあるようです。

その一つはEvernoteが日本語化に向けて、本格的に動き出し、その第一歩としてEvernoteウェブのトップページの日本語版が公開され、それとともに、日本語版公式ブログも開設されました。

また、ユーザー側からの動きとしてはEvernoteを本としてまとめるというものがあります。一つは『できるポケット+ Evernote』という書籍です。こちらはコグレマサトさんと、いしたにまさきさんによって著されたもので、発売日は3月5日だそうです。 目次はすでに公開されているですが、それを見たところ本の内容は本当の入門者向けだと感じました。Evernoteをちょっと使った事のある人ならおおよそ分かりそうな内容に終始していて、正直なところ私が参考にできる部分は非常に小さいと思います。

ユーザー側が出版するもう一つの書籍は電子書籍という形態で発表される『Evernoteハンドブック』です。こちらは知る人ぞ知るライフハッカーであり人気ブロガーでありEvernoteヘビーユーザーでもある堀正岳さん、佐々木正悟さん、大橋悦夫さんの3名によって書かれるもので、ダウンロード開始日は3月2日とのことです。こちらは私も参考にすることが多々ある3名の執筆なので期待が高まります。さらに電子書籍での発表というのが素敵です。このようなウェブサービスは日進月歩の発展を続けていて、紙媒体の出版ではどうしてもフットワークが重くなってしまいがちですし、今年の最新情報は来年になれば陳腐化していることでしょう。このような事情のため、フットワークの軽い電子書籍で発表することによって常に最新の情報を提供できるようにしたのは大正解と言えると思います。内容に関しては未だに明らかになっていませんが、お三方のことですからきっとヘビーユーザーの期待に応えるもののはずです。


つまり、今の情報社会において「Evernoteとはなんぞや」という疑問などは本屋に行って書籍を求めなくても、ググればたちどころに分かるのです。確かに書籍化することによって、これまでよりさらに多くの人々が食指を伸ばすことになるかもしれません。しかし、それではヘビーユーザーにとっては退屈なのも事実なわけです。

ググっていくつかのサイトで情報を得れば、Evernoteとは何であって、どのような特徴があるかなど、すぐに分かります。昨年11月の時点で、すでに日本では14万人が利用しているとのことなので、一定の市民権は得ていると捉えても差し支えないでしょう(とは言っても、先日ヤフートピックにEvernoteのCEO来日のニュースが流れていた時はさすがに驚きました)。

このような状況で求められるアウトプットは「私はこう使う」というものであると私は考えます。非常に自由度が高く、多様な使い方が可能なEvernoteを「どのような目的で、どのように使うか」という情報こそ、初心者からヘビーユーザーまで多くの人が求めているのではないでしょうか。

梅棹忠夫さんは有名な著書の中でこう述べています。
この本でわたしは、たしかに、知的生産の技術についてかこうとしている。しかし、これはけっして知的生産の技術を体系的に解説しようとしているのではない。これは、ひとつの提言であり、問題提起なのである。これをよまれたかたがたが、その心のなかに問題を感じとって、それぞれ個性的にして普遍的な知的生産の技術を開発されるための、ひとつのきっかけになれば、それでいいのである。そして、こういう問題を公開で議論するならわしが、これをきっかけにしてはじまるならば、わたしは大変うれしい。」(梅棹忠夫『知的生産の技術』p.19)

ライフハッカーのバイブルとも言うべきこの本の中で、梅棹さんは個々人の知的生産の技術は決して体系的で優れたものではないかもしれないが、それを他者と共有することの大切さを説いています。様々な技術・方法を大勢が提示しあう。他人の方法を試してみる。真似るところは真似る。分からないところは訊く。知っていることが教える。これこそがネット社会の知的生産の技術ではないでしょうか。

知的生産の技術について、いちばんかんじんな点はなにかといえば、おそらくは、それについて、いろいろとかんがえてみること、そして、それを実行してみることだろう。たえざる自己変革と自己訓練が必要なのである。」(前掲書p.20)

2010年2月21日日曜日

内田和成2006『仮説思考』を読む


本書は経営コンサルタントとして長年活躍してきた著者がそのノウハウを「仮説思考」に焦点を絞ってまとめたものである。

最近著者の『論点思考』が出版されたようで、書店で両者が隣り合って平積みされていたので手にとって見てみました。内容はとても面白そうであったので、より自分の問題意識に近い『仮説思考』を購入しました。読み進めていくといよいよ面白く、買ったその日に一気に読み切ってしまいました。

本書の章構成は以下のようになっています。

序章 仮説思考とは何か
 情報が多ければ正しい意志決定ができる?
 早い段階で仮説をもてばうまくいく
 現時点で「最も答えに近い」と思われる答え
  仮説思考を身につけるために

1章 まず、仮説ありき
 なぜ仮説思考が必要なのか
 先見力と決断力を支える
 情報は集めるよりも捨てるのが大事
 大きなストーリーが描けるようになる

2章 仮説を使う
  仮説をもって問題発見・解決に当たる
 仮説・検証のプロセスを繰り返す
 仕事の全体構成を見通す
 人を動かすのに必要な大局観

3章 仮説を立てる
 コンサルタントが仮説を思いつく瞬間
 分析結果から仮説を立てる
 インタビューから仮説を立てる
 仮説構築のためのインタビュー術
 仮説を立てるための頭の使い方
 よい仮説の条件
 仮説を構造化する

4章 仮説を検証する
 実験による検証
 ディスカッションによる検証
 分析による検証
 定量分析による検証

5章 仮説思考力を高める
 よい仮説は経験に裏打ちされた直感から生まれる
 日常生活の中で訓練を繰り替える
 実際の仕事の中で訓練する
 失敗を恐れるな

終章 本書のまとめ
 仮説の効用
 気持ち悪くても結論から考える
 失敗から学ぶ
 身近な上司・同僚・友人を練習台にする
 枝葉ではなく幹が描ける人間になろう


非常に体系的なまとめ方がなされていて、読みやすい印象を読者に与える好例です。


本書における著者の主張を一言で言ってしまえば、
「何事も仮説思考を用いて対処せよ」
ということになるかと思います。

本書のテーマはとして著者が掲げているのは、以下の4点です。
・仮説思考を見つけることによって、どんなメリットがあるのか?
・どうしたら仮説を構築することができるのか?
・立てた仮説を検証し、進化させていくにはどうしたらいいのか?
・仮説思考力を高めていくには日常どんなことをしたらいいのか?

これらはそれぞれが2〜5章の内容に相当しています。


仮説思考について詳述することがここでは避けますが、端的にその特徴をまとめると、
① 資料収集や分析に取りかかる前に、まず仮説を構築することで、
② 作業量や作業時間を節約できるだけでなく、
③ 全体像を把握できて軌道修正も容易になり
④ 仕事を効果的に進められるようになる。
といったところでしょうか。


特に私が興味を惹かれたのは、著者が「仮説が先。分析は後。」と繰り返し主張していることです。

何かの問題に立ち向かう際は、問題になっている可能性のあるものに関するデータを極力多く集めてから処置を下したいと思うのが普通ではないでしょうか。しかし、著者はそのような「網羅思考」では作業量が甚大なものになるだけで、本質を捉えることはできず、時間切れになることが多いと主張します。不完全な情報しか集まっていなくても、まずスタート地点で一定の仮説をたて、それを検証するために分析をするのが適切な手順なのだと言うのです。

確かに可能性のあるものをすべて集めようと思うと、タスクは無限に近い増殖を見せることでしょう。情報が多ければ適切な判断を下せるというのは誤りです。情報を増やせば増やすほど、どうしてもノイズが入りこんでしまい、本質的なことはかえって見えづらくなってしまうのではないでしょうか。情報の贅肉をそぎ落とし、必要最小限の分析で済むような効果的な仮説を立てることこそが重要なのだと気づきました。

私の属する学術分野でも帰納か演繹かという話にはよくなるのですが、往々にして帰納法的な論理展開が多くなってしまいます。もっと仮説演繹的な思考を血肉とすることで効果的な議論ができるようになりたいものです。

マインドマップソフトMiNDPiECEを使ってみる


前から気になっていた「マインドマップ」なるものに、ついに手を出すことにしました。

紙とペンを用いたマインドマップの書き方はそれなりに心得ていたのですが、これをMacで速くきれいに効果的に作成したいという欲求がむくむくと起き上がってきました。

ネットで検索してみると、FreeMindやNovaMind、考案者ブザン氏公認のiMindMapなど様々なものがヒットします。

フリーのものから1ライセンスが1万円以上するものまであるのですが、おおよそは値段と機能は比例関係にあるようです。

あとは個々人の経済状況とPC環境と使用用途と嗜好によるのでしょうが、私が気に入ったのはMiNDPiECEです。

これは10日間は無料で使えるので、一度インストールしてみて、気に入ったら有料版を購入することができますし、気に入らなかったら止めることもできます。

値段はシングルライセンス12800円、ダブルライセンス19800円とやや割高です。しかし、動作が軽快で、UIが綺麗で、画面が広く使え、ドラッグ&ドロップなど直感的な使い方ができるこのソフトは、私が試したマインドマップソフトの中で最高のものです。ブレインストーミングのようにピースを一気に羅列したのちにそれらを適宜マップの中に連結させていくのは、使っていてとても気持ちが良いです。説明書など不要で、キビキビと要求に応えてくれることも思考を妨げることがなくて良い感じです。

ちなみに以下は、現在の私の情報管理方法です。
EvernoteとDropboxがその根幹を担っていることがよく分かります。

2010年2月17日水曜日

モレスキンの牙城を崩すMDノートの存在


私は自他共に認める文房具好きです。
そんな私の頭を常に悩ませているのが、ノートやメモ帳に何を使うかということです。

ノートに関しては、前にも書いたようにニーモシネを使っています。
これは本当に優れたノートで、価格・品質・デザインともに非常に満足しています。

ところが困ったのは、メモ帳をどうするのかという問題なのです。

これまでも様々なものを使ってきました。システム手帳なるものに手を出した時期もありました。
しかしiPhoneを入手し、これにスケジュールやタスクの管理を任せられるようになると、システム手帳ではオーバースペックです。ですので私は、手帳は持たずにあくまでメモ帳というツールを使おうという姿勢を固めたわけですが、このメモ帳も百花繚乱という具合でなかなか一つに絞り込むことが難しいです。

もちろん最右翼はモレスキンです。
なんと言ってもこの高級感がたまらないです。ハードな表紙もすごくお気に入りですし、種類が豊富なのも良いです。
難点は価格が高いことと、ペンの種類によっては裏移りしてしまうことと、ルールドの場合罫線の幅が漢字を書くには狭いことでしょうか。それに非常に人気なので、他人とかぶる可能性が高いのも難点といえば難点です。

これまでもラージ版やポケット版など様々な種類のものを使ってきました。しかし、ラージ版はやや大きすぎて、手ぶらでちょっと出かける際に面倒になって持ち歩かなくなってしまい、泣く泣くやめました。ポケット版は逆に小さすぎて、書く際にスペースが狭いのが気になる点でした。

悩んでいた私が昨秋に出会ったが、ミドリ社のMDノートです。

「書くことにこだわった」というコンセプト通りの上等な紙質、文庫版・新書版・A5版・A4版という豊富なラインナップ、文庫版は630円という素敵な価格設定、Made in Japanの安心感。

銀座の伊藤屋で思わず小躍りしてしまうほど嬉しい出会いでした。すぐさま方眼罫の文庫版ノートを手にレジへと走った次第です。
現在私はこれに専用の革製カバーをかけて使用しています。

まだまだ模索中ではありますが、とりあえずはこのMDノートにメモを任せています。

現在はニーモシネ、MDノート、モレスキンの三者を併用しているのですが、その使い分けについてはまた後日に記したいと思います。

iPhone3GにおけるEvernoteの不満


何度かこのブログにも書いているように、私は非常にたくさんの情報をEvernoteに入れています。
自宅にいるときや大学にいるときは、Macから難なくアクセスできるのですが、出先や移動中などではどうしてもiPhoneで情報にアクセスしたい場合が出てきます。

もちろんiPhoneのEvernoteアプリを使うことになるわけですが、いかんせん快適からはほど遠い操作性です。
確かに私がiPhone3Gの8GBという貧弱なハードを使用していることが主な原因なのでしょうが、それにしても遅いし、操作中に落ちることも珍しくありません。PDFファイルを読む際などは、1分以上待たされることもあります。

Evernoteがすばらしいサービスであることは重々承知しており、そのためにできるだけ一極集中して大量のデータを入れ込んでいるのですが、こうもiPhoneでの操作性が悪いと、これらの情報を活用しづらいのが現状です。

ほかのアプリならともかくメモアプリは起動や操作の速さが非常に重要な要素であると思います。特に移動中にメモを確認したい時というのは、十中八九急ぎに決まっているわけです。その要求を満たしてくれないのは、非常に残念です。

このために3GSに買い換えようかとも考えたのですが、噂によると今年中に新しいiPhone(0S 4.0?)が出るとの話なので、しばらくは様子を見ようと思います。

Dropboxは3Gでも悪くないスピードが実現できているので、Evernoteでも同様のスピードで操作できるようになることを切に願います。

2010年2月7日日曜日

東郷雄二2009『新版 文科系必修研究生活術』を読む


私はこの本の主なターゲット層にまさにドンピシャリな文科系大学院生なので、非常に興味深く読ませていただきました。
よく練られており、内容もうまくまとめられていて、参考になる部分も多くありました。

本書は文科系研究者の望ましい研究姿勢とはどのようなものなのかを至極具体的に記したもので、ターゲットは大学生3,4年生、大学院生などの将来研究者を志望している人々です。ターゲットから外れる一般の人々にとってはそれほど面白い内容ではないかもしれませんが、学生の立場では参考になる点が多々あり、後輩たちにも自信を持って勧められる1冊です。

まずは目次から確認してみましょう。

ーーーーーーーーーーーーーーーーー
はじめに

第1章 研究生活入門
 研究とはなんだろうか
 研究者になるための適性
 転向のすすめ
 クロスオーバーのすすめ

第2章 研究環境をつくる
 指導教員の必要性
 指導教員の選び方
 研究の仲間を作る
 研究仲間の作り方

第3章 研究テーマを選ぶ
 研究テーマの選び方
 研究テーマに出会うには
 何がよい研究テーマか
 短期的テーマと長期的テーマ

第4章 研究方法のAからZまで
 先行研究の重要性
 文科系の研究におけるテクスト相互関係
 選考研究探索の方法
 研究カードを取る
 研究カードに何を書くか
 研究カード作成の方法
 文献カードを作る

第5章 研究のための読書術
 自分で買うか、図書館で借りるか
 読書の記憶を残す
 全部読むか、拾い読みするか
 アンテナを張る
 ブラウジングのすすめ
 論文の保管と管理
 コピーした論文は読む

第6章 図書館活用法
 図書館を活用する
 図書館で勉強する
 文献を探す

第7章 論文を書く
 論文とは何か
 先行研究の批判検討
 情報をくみかえる
 自分の問題を設定する
 問題解決のための調査・実験
 アウトラインを作る
 論文の論理構造
 論文の書式
 論文執筆の実際

第8章 文科系研究者のためのパソコン術
 私の機械遍歴
 文章を書く ーワープロとエディタ
 文章の構想を練る ーアウトライン・プロセッサ
 研究カードを作る
 データベース・ソフト
 文献管理ソフト
 パソコンを使って論文を書く

第9章 学会発表をする
 学会活動の意味
 博士課程になったら学会発表が中心に
 発表を申し込む
 発表原稿を作る
 発表の準備
 プレゼンテーション・ツールを使う
 発表の構成
 発表のやり方
 論文を投稿する
 どのような雑誌に投稿するか

第10章 研究者のための留学術
 いつ留学するか
 留学の目的をはっきりさせる
 どうやって留学するか
 留学情報の集め方
 留学まで

第11章 就職先を見つける
 指導教員の紹介
 公募に応募する
 公募に応募するときの注意
 就職するにはどうすればよいか

おわりに
ーーーーーーーーーーーーーーーーー

お手本のような目次だと一目見て思いました。
この本のどの部分にどのような内容のものが記されているかが、一目瞭然です。
目次を読んだだけでどのような内容の本か、著者の主張はどのようなものかが分かるというのは良書の条件の一つでありましょう。

また著者は本書の「はじめに」の部分で、本書を著した動機を3つ示しています。
1つは、近年増加傾向にある大学院生や彼らを指導する教授の手助けをしたい。
2つは、学部時代に受動的な知識吸収をしていた学生が、大学院において能動的に研究を進める際に役立ちたい。
3つは、学問研究の広い部分が神秘などでなく、伝達可能な技術であることを示したい。

読者はこの目次と「はじめに」を読んで、著者の立場と主張の概要をはっきりと捉えることができます。
非常にリーダーフレンドリーな本の好例であると言えるでしょう。


記述されている内容自体に目新しいものは多くないのですが、パソコンの利用を積極的に奨励している点や、自らの知的生産術を惜しみなく開陳している点などは好印象です。普遍的なものではなく(研究生活術に普遍的なものなどないのかもしれません)、個別具体的な手法を紹介している点は梅棹忠夫の『知的生産の技術』を彷彿させるものがありました。


論文の論理構造の章では、論文を執筆する際にいかに文章を組み立てるかということが記されているのですが、そこでもいくつか興味深い記述がありました。

私も院生のはしくれなので、論文に関わるおおよそのことは理解しているのですが、それを明確に形にすることは難しいものです。
著者はわかりやすい形で、序論・本論・結論に何を書くべきなのかを説明してくれます。

ーーーーーーーーーーーーーーーーー
序論
 問題の設定:その論文でどのような問題を扱うか
 問題の背景:なぜその問題を扱うのか
 先行研究の状況:その問題にはどのような先行研究があるか
 問題へのアプローチ方法:どのような方法でその問題を扱うか

本論
 先行研究の批判的検討
 問題点の摘出
 問題点を解決するための調査・実験の説明
 調査・実験の結果の提示
 調査・実験の結果の吟味
 どれだけの問題を解決できたかの批判的検討

結論
 最終的に得られた結論の提示
 結論をもう一度問題全体に置き直してその意義を検討
 この研究の限界を指摘
 残された問題点と将来の展望を提示
ーーーーーーーーーーーーーーーーー

本書は体系的に叙述されていて、読みやすい良書だと思います。

こういう本の効果的な利用の仕方は、紹介された手法を一度自分で試してみて、採用するかしないかを考えることでしょう。すべてが自分にフィットするわけがないので、真似すべきところだけを真似するという戦略でいきたいと思います。