2010年4月2日金曜日

大学生活を有意義にするための2つの心得


後輩から「新入生のためのパンフレットに一文書いてくれ」と頼まれ、しぶしぶ承諾しました。

せっかく書いたので、ここにもアップさせていただきます。


みなさん、こんにちは。大学入学おめでとうございます。

専攻に関しては他の方に任せて、私はもう少し一般的な話をしたいと思います。この場を借りてみなさんに伝えたいことはひとつです。それは、「大学生活を意義あるものに」ということです。

20歳前後に過ごす4年間は、人生の中でとても貴重な時間です。この大学でみなさんは様々な出来事を体験し、様々な人に出会うことでしょう。私自身の経験に照らし合わせても、大学時代の4年間はとても多くのことを私に教えてくれました。

しかし、この貴重な時間を最大限に活用するためにはいくつかの心得が必要になってきます。ここでは、大学生活を無為に過ごさないための2つの心得をみなさんに授けたいと思います。

まず最も大切なことは、本を読むことです。それも良書をたくさん読むことです。本を読むことには大きく分けて2つの効用があると思います。1つは、言語運用能力の向上です。人間が生きていくためには、他者とのやり取りが欠かせません。その際には、自らの考えを明確にし、他者の考えを的確に受け取れることが大切です。凝った言い回しなどを覚える必要はありませんが、思考を言語化できる能力はきっとみなさんを助けてくれるでしょう。2つ目の効用は、思考の深化です。多くの本は著者が、ある目的のもとに、論拠を示して、ある主張をまとめたものです。著者の目的は何か、論拠は何かという能動的な姿勢で数多くの本と接することで、論理的な思考力や客観的観察力、対象を比較検討する力を身につけることができると思います。

第二の心得は、回り道を厭(いと)わないことです。私たちは移動するときだけでなく、物事を考えるときにも、つい最短経路を求めてしまいがちです。確かに限りある時間をいかに配分して何に投資するかはとても大切な問題です。しかし、せっかくまとまった時間のある大学生なのですから、積極的に回り道をしてみましょう。面倒くさがってインターネットで検索すれば出てくるような答えで満足しては、そこからの成長は望めません。時間がかかっても自分の頭で考えたこと、調べたことはきっとみなさんの糧となるはずです。伝聞の知識とは違い、自分で考えたことはあらゆる場面に応用が利くので、新たな課題に向き合ったときに解決のヒントにもなるでしょう。

最初は無限とも思える大学生活も、気づけば矢のように過ぎ去っていきます。みなさんの毎日が有意義なものであること、卒業後に大学生活を振り返った時にこの大学へ入って良かったと思えることを切に願います。




大学というアカデミアでは、どうしてもアルバイトやサークル活動を軽んじる傾向がありますが、私自身としては本人がちゃんと選んだ事なのであれば特に問題はないと思います。そこから学べる事も多くあるでしょう。

後輩には、専門のことばかり詳しくなってしまい、他の事は全く興味や知識がないという専門バカにだけはなってほしくないです。そんな人間に魅力は感じないですし、研究活動も薄っぺらいものになってしまうと思います。大学生活を通じて、もっと自分の幅を広げるようにしてほしいものです。

2010年3月2日火曜日

『Evernoteハンドブック』を読む


ついに待望の『Evernoteハンドブック』が発売されました。

私も午前中にダウンロードして、早速読ませていただきました。

まずは、以下に本書の章構成を紹介したいと思います。


Chapter 1 Evernoteをはじめよう
 Evernoteで何ができる?
 Evernoteのアカウントを作成する
 ブラウザにウェブクリッパーをインストールする
 Evernoteのクライアントをインストールする
 iPhone/Android版のEvernoteをインストールする
 Evernoteの基礎知識:ノートとノートブック
 まずはテキストノートを作ってみる
 [Win]手書き風味のインクノートをつくってみる
 ウェブページをクリッピングして保存する
 スクリーンキャプチャーを撮影する
 マルチメディアが入ったノートを作成する
 ノートブックを作成してノートを整理する
 ノートを検索して探す単純な文字検索
 Web版Evernoteのインターフェース
 Windows版Evernoteのインターフェース
 MacOSX版Evernoteのインターフェース
 iPhone版Evernoteのインターフェース
 Android版Evernoteのインターフェース

Chapter 2 Evernoteを使いこなす
 いつでも使えるグローバルショートカット
 電子メールでいつでもどこでもノートを追加
 ノートのなかでToDoチェックボックスを活用する
 ノートにタグをつけてゆるやかに整理する
 タグを階層化してきめ細かい情報整理をおこなう
 ノートブックを使うか、タグを使うか?それが問題だ
 Evernote最大の機能、文字認識機能のしくみと威力
 「保存された検索」でいつもの探し物に近道を
 ノートを自動で整理してくれる属性情報を使いこなす
 ノートを別ファイルでエキスポート・インポートする
 2つのノートを1つにマージする
 iPhoneクライアントを使いこなす
 進化したクライアントWindows版Evernote3.5
 Evernoteプレミアムに移行する

Chapter 3 Evernoteの一歩進んだ使い方
 Evernoteを使うときに増やしたい情報と減らしたい情報
 ノートブックを共有する知り合いと、世界と
 GoogleReaderから直接情報をクリップする
 ScanSnapから直接Evernoteにスキャンする
 Eye-FiとEvernoteで写真のような記憶をつくる
 Evernoteマスターの鍵、高度な検索条件
 情報を探す2種類の検索:ノート群検索とノート内検索
 SpotlightでEvernoteのノートだけを検索する
 日本語検索の注意点:ダブルクオーテーションを使う
 Mailpiaでブログを自動的にEvernoteに
 Twitterでの日々のつぶやきを全自動でEvernoteへ
 Twitterから直接Evernoteにメモをとる
 iPhoneのJotNotからEvernoteへ資料を送信する

Chapter 4 Evernoteを仕事と日常で使いこなす
 ユビキタス・キャプチャーの習慣で人生を保存する
 Evernoteが秘書になる参照情報集約センターの作り方
 ネタ帳ガーデニングで常にネタを生き生きと
 Evernoteで成長する読書ノートをつくる
 理想の研究ワークデスクとしてのEvernote
 Evernoteで43フォルダーズ的に情報整理する
 Evernoteで作るミニマルGTDセットアップ
 Evernoteのタグを使ったプロジェクトマネジメント
 会うたびに追加されてゆく人脈データベースを作る
 Evernoteで作る名刺データベース
 ワインの知識を体系化して自分の知らない自分に会う
 囲碁・将棋・チェスの上達にEvernoteを使う
 Evernoteでお料理百科(レシピノート)を作る
 宴会・懇親会のお店選びからデータベース化まで
 お目当ての部屋探しにEvernoteを使う


一目で分かると思いますが、Evernoteに関して非常に幅広い記述を行っており、初心者から上級者まで誰もが使える本に仕上がっています。私のような自称中級者は学ばせていただくことが多くありました。それぞれの項目も1,2頁で簡潔に記載されていて、分かりやすいです。

Chapter 1ではEvernoteの基本を、Chapter 2ではその発展を示しており、実際にEvernoteを使っている人はChapter 3以降を中心に読むことになるのではないでしょうか。私はそうでした。

Chapter 3では周辺機器や他のサービスとの連携、また高度な検索方法についてまとめられています。特に高度な検索に関しては、私はほとんど知らなかったので、このような形でまとめていただけると非常に助かります。

また、Chapter 4では実際に著者の3人がどのような使い方をするのかというのをケーススタディ的に記していて、大いに参考になります。「そんなことまでEvernoteでやる意味があるのか」という感想をもったものも正直いくつかありましたが、「こんなことにも使えます」というアナウンスはこのようなハンドブックの中では一定の価値があると思うので、それはそれで読者側とすれば取捨選択すれば良いだけの話ですね。

ただ、電子書籍という画期的な形態をとった本書にも残念な点が2つほどあります。
1つは、目次がないということです。
どうしても必要というわけではないのでしょうが、本という体裁をとっている以上、その本の構成は冒頭部分で示すべきだと思います。読者にとっても、読みやすさが全く違ってくるのではないでしょうか。なぜ目次をつけなかったのか、理解に苦しみます。

2つめは、誤植がかなり多いことです。
私も本を編集することがあるので、誤植が出版物にはある程度つきものであることは理解しています。しかし、校正を何回行ったのか分かりませんが、少し誤植が多すぎるように思います。正直に言うと、このレベルではまだ表に出すべきではなかったように思います。


しかし、電子書籍のメリットは、悪かったところを皆で見いだして、Ver.2以降に反映できることです。
私もこの本のすばらしさを充分理解したうえで、苦言を呈させていただきました。
私としては参考になる部分も多くあり、早速いくつかの手法を試してみようと考えています。

2010年2月28日日曜日

能動的読書のために


迷宮入りするかに思えた写真整理も一段落したことで、本日は穏やかな休日を送っていました。

こんな日は一日中、本を読むのが私の楽しみのひとつです。

本の読み方というのも十人十色でしょうから、ここで私なりの本の読み方を紹介したいと思います。

多くの人と同様、私も読書技術を日々磨いていまして、新たな手法を取り入れるなど様々な工夫をしています。紆余曲折を経て、現在はこの方法がベストというものを編み出すに至りましたが、この方法もいつまで続くのかは分かりません。

私の読書技術の大きな特色の一つは、書き込みをせずに、付箋を使うというものです。

一時期は本の余白に重要点や疑問点などをこれでもかと書き込んでいたのですが、この書き込み法がもつ様々な弱点に気づき、そっとペンを置きました。

私が思う書き込み法の弱点はいくつかあります。
1つ目は、いつでも書き込めるとは限らないことです。机の上で本を読んでいるときは書き込むのが容易だと思うのですが、満員電車の中や就寝前のベッドの中では、本を読むことはできてもそこにアイデアを書き込むのは困難を伴います。本の内容を咀嚼し、思考を整理するために書き込むのに、場所によってはそれを行えないというのでは本末転倒なような気がします。

2つ目は、書き込まれた情報が本とともに本棚に入ってしまうため、着想やアイデアを整理しづらいことです。せっかく本の内容に触発されて素晴らしいアイデアが浮かんでも、それを効果的に整理・活用しないと無駄になりかねません。さらに、書き込みがあるのかないのかすら外見から分からないのでは、何年か経ったあとに「俺はこの時こんなことを考えていたのか・・・」という思い出にしかならないのではないでしょうか。

他にも細かい点はいくつかありますが、大きな弱点はこれぐらいです。

では、私の考える効果的な読書技術とはどのようなものなのか。

持ち物はなにもいりません。
必要なのは、前もって表紙の裏に付箋(ナイロンで半分透明のものがベスト)を20枚ほど貼付けておくことだけです。

あとは読み進めていって、気になるところがあればその箇所に付箋をはる。この繰り返しです。

読了したのちは、表紙裏の余った付箋を回収し、しばし置いておきます。

時間ができたときには、この本の付箋が貼られた部分を再び読み、該当箇所の抜き出しおよび着想をEvernoteに記していきます。
本一冊分をノート一つに対応させることもあれば、アイデア一つに対してノートを一つ作成することもあります。
Evernoteを使うことによって、着想を一元管理しながら、著書とのリンクは外さないということが可能になるのです。

この手法のミソは、読んでから時間を置いて記録をとることだと思います。
ある程度時間を経過させることによって、読了後の興奮状態ではなく、かなり冷静な視点で著書に当たることができます。

私の家には今数えたところ、Evernote入力待ちの本が約40冊あり、入力が完了して売却待ちのものが約10冊あります。
かなり溜まってきているので、近いうちに時間を見つけて一気に打ち込みたいと考えています。

方法は人それぞれ様々あるのでしょうが、一番まずいのが読んだら読みっぱなしという態度だと思います。
読書というのはある意味では受動的な知的活動でしょう。しかし、その内容をいかに自分のものにするか、いかに発想を広げていくかという能動的な態度を持つことは可能ですし、そのような態度を持って臨まないと、本は急にそっけない一面を見せるような気がします。自分なりの読書技術を構築することによって、能動的な態度で読書を行えるようになり、自分の大きな糧とできるのではないでしょうか。

2010年2月27日土曜日

Dropboxを使ったiPhotoの同期を断念する


最近はデジタルカメラが普及してきたこともあって、多くの人が気軽に写真を撮るようになってきています。私もデジタル一眼レフを持っており、公私を問わず写真を撮る機会が多くあります。

さて、今回は取りためた膨大なデジタル写真をいかにして保存・管理するかという問題を考えたいと思います。

私の写真データの総量は約13GBです。写真は他の作業で使うファイルとは異なり、基本的に削除することがないので、データの総量は時間とともに増える一方です。

これまではDropboxのPhotoフォルダの中にイベントごとにサブフォルダを作成して、全ての写真をそこに入れていました。Dropboxはバックアップをネット上に残すとともに、もしそれが消えても遡って復元できるので、これでも保存・管理については充分なのですが、活用という側面から考えると充分とは言い難いのです。

そこで、様々なネット上の偉人の意見を参考に、iPhotoとDropboxを併用してみようと思い立ちました。「人々」や「撮影地」といった他には無い優れた機能を有したビュワーであるiPhotoを使わないというのは宝の持ち腐れであると考えたのです。Dropboxは保存には適しているのですが、ビュワーとしてはお世辞にも高機能とは言い難いのが現状です。

iPhotoとDropboxを併用することは、その両者の良いところをつまみ食いすることを意味します。つまりデータ本体はDropbox上に置いておいて、それをiPhotoによって活用するという手法です。

やり方は非常に簡単だと思っていたのですが、なかなかどうして、これがうまくいきません。何か設定のミスでもあったのでしょうか。いずれにせよ、私には原因は不明です。
「iPhoto Libraly」をDropbox内に作り、それに全ての写真を入れ、MacでiPhotoを立ち上げる際にそのDropbox内のLibraly を参照するように設定しました。しかし、同期されるものが一部ある一方で、同期されないものも数多くあるようです。さらに細かい修正を一方で加えても、もう一方のMacには反映されないという事もありました。

便利かと思って試してみたのですが、今回はあきらめることにします。

とりあえず現状ではDropboxにすべての写真を入れておいて、母艦である自宅のiMacのiPhotoをビュワーとして用いるのが妥協案です。このiPhotoを常に立ち上げておけば、MacBookからでもライブラリの共有機能を用いることによってiPhotoを使うことができるでしょう。正直私はそこまで、過去の写真ファイルを頻繁には見ないのでこの方法でも充分と言えなくもありません。もっとヘビーに使う方々はどのように写真を整理しているのでしょうか。

2010年2月26日金曜日

あえてScanSnapからEvernoteへは転送しない


ScanSnapは大変便利なドキュメントスキャナです。かなりのヒット商品のようですし、私も非常に重宝しています。

ScanSnapとEvernoteの連関性は強力で、読み込んだ書類を自動的にOCR認識して、それをEvernoteに取り込むという作業をワンタッチでやってくれたりもします。

この方法を使うと、とても速く書類が整理できるためEvernote使いとしてうれしい限りなのですが、いくつかの問題点があり、過去に使っていたこの手法は現在では多くの場合で使っていません。

その問題点は2つあります。

1つは、容量の問題です。私はあまり詳しくないので、理由はよく分からないのですが、ScanSnapでOCR認識したPDFファイルは少し重いようです。毎月容量限度との戦いを強いられている私にとっては、ファイルの容量はとても大きな問題なのです。また、Evernoteには1ファイル25MB以下という制限もありますから、重いPDFファイルの扱いに困っている人は私だけではないでしょう。

そこで私が採用した解決法は、AdobeのAcrobatを使うというものです。OCR認識をScanSnapではなく、Acrobatで行うのです。

ScanSnapで普通にスキャンしてPDF化したのちに、AcrobatでOCR認識を行うと、ScanSnapで行ったものよりも3割から6割ほど軽いPDFファイルができあがります。これをEvernoteに入れるのです。この手法はScanSnapから直接取り込むよりも一手間かかるのが唯一の難点ですが、これまで重くてEvernoteに入れることができなかったPDFファイルが入れられるようになるのであれば、これぐらいの手間を惜むべきではないでしょう。

2つめの問題点は、縦書き文書の取り扱いです。ScanSnapのOCR認識では縦書きの文章を検索でひっかけることが難しいようです。Acrobatでは文書が縦書きでも横書きでも問題なく読み取ってくれるので重宝しています。

AcrobatによるOCR認識は確かに時間がかかるのですが、「OCRを使用して複数のファイルのテキストを認識」というコマンドがあり、一気に作業を終わらせることができるので、就寝時などMacを長時間使わない際にその作業を行えば、それほど苦痛にはならないと思います。

かく言う私も、数枚しかない紙資料をスキャンする際は、ScanSnapのOCR認識を使っています。

しかし、重いファイルを扱う際には他にも方法があるという事はおいて損はないと思います。
Evernoteに入れるPDFファイルの容量でお困りであれば、是非一度試してみてはいかがでしょうか。

2010年2月25日木曜日

現時点での私のEvernoteの使い方


昨日に、大勢で各人のEvernote使用法を共有することを提案したので、ここで私も自分の現時点での使用法を示しておきたいと思います。

Evernoteの使い方はつまるところ、何を入れるのか、そしてノートブックとタグをいかに整理するのかという2点に集約されるのではないでしょうか。もっと大きく捉えれば、インプットの仕方やScanSnapの使い方のような話にもなるのでしょうが、とりあえず今回は省略することにします。

まず、Evernoteに何を入れるのか。

これは個々人によって多少異なると思います。ネットで見てみると、タスク管理として用いている方や、画像のファイルの整理として使う方もおられるようです。私は主に自身の研究活動のためにEvernoteを使っているので、入れるものは論文のPDFファイル(数が非常に多く、重いため苦労します)、アイデアメモ、データメモ、図版資料のJPGファイルが主です。自身が取ったノートや学会の配布資料などはスキャンして全て入れていますし、興味深いウェブクリップも入れています。また備忘録として忘れるべきでないメールの内容や大学の掲示なども入れています。

タスク管理として使うこともできるのでしょうが、これにはToodledoを使っていまして、現時点では不満は特にないのでEvernoteは研究活動に特化した使い方をしています。


つぎに、ノートブックとタグをいかに使うのか。
これには大きく分けて3パターンの使い方があるでしょう。つまり、ノートブック中心派とタグ中心派、および両使い派に分かれると思います。私はこの中では、タグ中心派に位置します。

私はノートブックは2つしか作っていません。その名も"Sync Notebook"と"Local Notebook"です。本当は"Sync Notebook"一本にしたいのですが、私は毎月Evernoteの月容量500MBを使い果たすので、ほぼ使い果たしたあとにアップロード待ちのノートを入れるスペースとして"Local Notebook"を置いているのです。月が変わりEvernoteの容量がリセットされると、私は"Local Notebook"の中から約490MBのノートを選択して、それらを"Sync Notebook"に移すわけです。

ノートの分類はすべてタグで行います。ノートブック分類を使わない理由の一つが、分野横断的な内容のノートをどこに入れるのかで迷いが生じることです。ある程度適当に入れておいて、あとは検索して探すというのも一つの手段なのでしょうが、そうするとEvernoteの良い点である情報を一覧することが難しくなると思うのです。また、タグの階層化も使いません。その理由は下部概念のタグを付ける際に、一つのノートにその下部タグを包括する上部タグを付ける必要が生じるからです。自動でやってくれれば良いのですが、手動でやるのはどうも面倒なのです。タグの数が約30個という少ない数なので、現時点では階層化してまで整理する必要性は感じていません。

タグは主にジャンル名で付けています。似たようなジャンルは頭文字に同じマークを付けることで、うまく配列されるように留意しています。タグがアルファベット順でなくて、自由に並び替えできればもっと便利だと思うですが、現時点では難しいようです。

あとはひたすらノートにタグを付けていく作業を行うのみです。私はタグ単位で閲覧することが多いので、タグを付ける際にもノートの内容が少しでもタグの領域にかするようならそのタグをつけることにしています。多くの情報を一覧することによって発生する知的化学反応を楽しみにしているというのも、このタグ中心派の言い分なわけです。

タグ中心派の最右翼、ノートブック不要派の弱点に先日気づいたので、それを加えて筆を置きたいと思います。それは、iPhoneでEvernoteのオフライン機能が使えないことです。この機能はノートブック単位でどれをオフラインにするか決めるものなので、大量のデータを一つのノートブックに集中させている私はこの機能を利用できないようです。iPhoneが圏外の場所でもノートを閲覧できないのは残念ですが、仕方ないですね。

2010年2月24日水曜日

Evernoteの個人的使い方を発信すること


最近Evernoteをめぐって、ネット上で様々な動きがあるようです。

その一つはEvernoteが日本語化に向けて、本格的に動き出し、その第一歩としてEvernoteウェブのトップページの日本語版が公開され、それとともに、日本語版公式ブログも開設されました。

また、ユーザー側からの動きとしてはEvernoteを本としてまとめるというものがあります。一つは『できるポケット+ Evernote』という書籍です。こちらはコグレマサトさんと、いしたにまさきさんによって著されたもので、発売日は3月5日だそうです。 目次はすでに公開されているですが、それを見たところ本の内容は本当の入門者向けだと感じました。Evernoteをちょっと使った事のある人ならおおよそ分かりそうな内容に終始していて、正直なところ私が参考にできる部分は非常に小さいと思います。

ユーザー側が出版するもう一つの書籍は電子書籍という形態で発表される『Evernoteハンドブック』です。こちらは知る人ぞ知るライフハッカーであり人気ブロガーでありEvernoteヘビーユーザーでもある堀正岳さん、佐々木正悟さん、大橋悦夫さんの3名によって書かれるもので、ダウンロード開始日は3月2日とのことです。こちらは私も参考にすることが多々ある3名の執筆なので期待が高まります。さらに電子書籍での発表というのが素敵です。このようなウェブサービスは日進月歩の発展を続けていて、紙媒体の出版ではどうしてもフットワークが重くなってしまいがちですし、今年の最新情報は来年になれば陳腐化していることでしょう。このような事情のため、フットワークの軽い電子書籍で発表することによって常に最新の情報を提供できるようにしたのは大正解と言えると思います。内容に関しては未だに明らかになっていませんが、お三方のことですからきっとヘビーユーザーの期待に応えるもののはずです。


つまり、今の情報社会において「Evernoteとはなんぞや」という疑問などは本屋に行って書籍を求めなくても、ググればたちどころに分かるのです。確かに書籍化することによって、これまでよりさらに多くの人々が食指を伸ばすことになるかもしれません。しかし、それではヘビーユーザーにとっては退屈なのも事実なわけです。

ググっていくつかのサイトで情報を得れば、Evernoteとは何であって、どのような特徴があるかなど、すぐに分かります。昨年11月の時点で、すでに日本では14万人が利用しているとのことなので、一定の市民権は得ていると捉えても差し支えないでしょう(とは言っても、先日ヤフートピックにEvernoteのCEO来日のニュースが流れていた時はさすがに驚きました)。

このような状況で求められるアウトプットは「私はこう使う」というものであると私は考えます。非常に自由度が高く、多様な使い方が可能なEvernoteを「どのような目的で、どのように使うか」という情報こそ、初心者からヘビーユーザーまで多くの人が求めているのではないでしょうか。

梅棹忠夫さんは有名な著書の中でこう述べています。
この本でわたしは、たしかに、知的生産の技術についてかこうとしている。しかし、これはけっして知的生産の技術を体系的に解説しようとしているのではない。これは、ひとつの提言であり、問題提起なのである。これをよまれたかたがたが、その心のなかに問題を感じとって、それぞれ個性的にして普遍的な知的生産の技術を開発されるための、ひとつのきっかけになれば、それでいいのである。そして、こういう問題を公開で議論するならわしが、これをきっかけにしてはじまるならば、わたしは大変うれしい。」(梅棹忠夫『知的生産の技術』p.19)

ライフハッカーのバイブルとも言うべきこの本の中で、梅棹さんは個々人の知的生産の技術は決して体系的で優れたものではないかもしれないが、それを他者と共有することの大切さを説いています。様々な技術・方法を大勢が提示しあう。他人の方法を試してみる。真似るところは真似る。分からないところは訊く。知っていることが教える。これこそがネット社会の知的生産の技術ではないでしょうか。

知的生産の技術について、いちばんかんじんな点はなにかといえば、おそらくは、それについて、いろいろとかんがえてみること、そして、それを実行してみることだろう。たえざる自己変革と自己訓練が必要なのである。」(前掲書p.20)

2010年2月21日日曜日

内田和成2006『仮説思考』を読む


本書は経営コンサルタントとして長年活躍してきた著者がそのノウハウを「仮説思考」に焦点を絞ってまとめたものである。

最近著者の『論点思考』が出版されたようで、書店で両者が隣り合って平積みされていたので手にとって見てみました。内容はとても面白そうであったので、より自分の問題意識に近い『仮説思考』を購入しました。読み進めていくといよいよ面白く、買ったその日に一気に読み切ってしまいました。

本書の章構成は以下のようになっています。

序章 仮説思考とは何か
 情報が多ければ正しい意志決定ができる?
 早い段階で仮説をもてばうまくいく
 現時点で「最も答えに近い」と思われる答え
  仮説思考を身につけるために

1章 まず、仮説ありき
 なぜ仮説思考が必要なのか
 先見力と決断力を支える
 情報は集めるよりも捨てるのが大事
 大きなストーリーが描けるようになる

2章 仮説を使う
  仮説をもって問題発見・解決に当たる
 仮説・検証のプロセスを繰り返す
 仕事の全体構成を見通す
 人を動かすのに必要な大局観

3章 仮説を立てる
 コンサルタントが仮説を思いつく瞬間
 分析結果から仮説を立てる
 インタビューから仮説を立てる
 仮説構築のためのインタビュー術
 仮説を立てるための頭の使い方
 よい仮説の条件
 仮説を構造化する

4章 仮説を検証する
 実験による検証
 ディスカッションによる検証
 分析による検証
 定量分析による検証

5章 仮説思考力を高める
 よい仮説は経験に裏打ちされた直感から生まれる
 日常生活の中で訓練を繰り替える
 実際の仕事の中で訓練する
 失敗を恐れるな

終章 本書のまとめ
 仮説の効用
 気持ち悪くても結論から考える
 失敗から学ぶ
 身近な上司・同僚・友人を練習台にする
 枝葉ではなく幹が描ける人間になろう


非常に体系的なまとめ方がなされていて、読みやすい印象を読者に与える好例です。


本書における著者の主張を一言で言ってしまえば、
「何事も仮説思考を用いて対処せよ」
ということになるかと思います。

本書のテーマはとして著者が掲げているのは、以下の4点です。
・仮説思考を見つけることによって、どんなメリットがあるのか?
・どうしたら仮説を構築することができるのか?
・立てた仮説を検証し、進化させていくにはどうしたらいいのか?
・仮説思考力を高めていくには日常どんなことをしたらいいのか?

これらはそれぞれが2〜5章の内容に相当しています。


仮説思考について詳述することがここでは避けますが、端的にその特徴をまとめると、
① 資料収集や分析に取りかかる前に、まず仮説を構築することで、
② 作業量や作業時間を節約できるだけでなく、
③ 全体像を把握できて軌道修正も容易になり
④ 仕事を効果的に進められるようになる。
といったところでしょうか。


特に私が興味を惹かれたのは、著者が「仮説が先。分析は後。」と繰り返し主張していることです。

何かの問題に立ち向かう際は、問題になっている可能性のあるものに関するデータを極力多く集めてから処置を下したいと思うのが普通ではないでしょうか。しかし、著者はそのような「網羅思考」では作業量が甚大なものになるだけで、本質を捉えることはできず、時間切れになることが多いと主張します。不完全な情報しか集まっていなくても、まずスタート地点で一定の仮説をたて、それを検証するために分析をするのが適切な手順なのだと言うのです。

確かに可能性のあるものをすべて集めようと思うと、タスクは無限に近い増殖を見せることでしょう。情報が多ければ適切な判断を下せるというのは誤りです。情報を増やせば増やすほど、どうしてもノイズが入りこんでしまい、本質的なことはかえって見えづらくなってしまうのではないでしょうか。情報の贅肉をそぎ落とし、必要最小限の分析で済むような効果的な仮説を立てることこそが重要なのだと気づきました。

私の属する学術分野でも帰納か演繹かという話にはよくなるのですが、往々にして帰納法的な論理展開が多くなってしまいます。もっと仮説演繹的な思考を血肉とすることで効果的な議論ができるようになりたいものです。

マインドマップソフトMiNDPiECEを使ってみる


前から気になっていた「マインドマップ」なるものに、ついに手を出すことにしました。

紙とペンを用いたマインドマップの書き方はそれなりに心得ていたのですが、これをMacで速くきれいに効果的に作成したいという欲求がむくむくと起き上がってきました。

ネットで検索してみると、FreeMindやNovaMind、考案者ブザン氏公認のiMindMapなど様々なものがヒットします。

フリーのものから1ライセンスが1万円以上するものまであるのですが、おおよそは値段と機能は比例関係にあるようです。

あとは個々人の経済状況とPC環境と使用用途と嗜好によるのでしょうが、私が気に入ったのはMiNDPiECEです。

これは10日間は無料で使えるので、一度インストールしてみて、気に入ったら有料版を購入することができますし、気に入らなかったら止めることもできます。

値段はシングルライセンス12800円、ダブルライセンス19800円とやや割高です。しかし、動作が軽快で、UIが綺麗で、画面が広く使え、ドラッグ&ドロップなど直感的な使い方ができるこのソフトは、私が試したマインドマップソフトの中で最高のものです。ブレインストーミングのようにピースを一気に羅列したのちにそれらを適宜マップの中に連結させていくのは、使っていてとても気持ちが良いです。説明書など不要で、キビキビと要求に応えてくれることも思考を妨げることがなくて良い感じです。

ちなみに以下は、現在の私の情報管理方法です。
EvernoteとDropboxがその根幹を担っていることがよく分かります。

2010年2月17日水曜日

モレスキンの牙城を崩すMDノートの存在


私は自他共に認める文房具好きです。
そんな私の頭を常に悩ませているのが、ノートやメモ帳に何を使うかということです。

ノートに関しては、前にも書いたようにニーモシネを使っています。
これは本当に優れたノートで、価格・品質・デザインともに非常に満足しています。

ところが困ったのは、メモ帳をどうするのかという問題なのです。

これまでも様々なものを使ってきました。システム手帳なるものに手を出した時期もありました。
しかしiPhoneを入手し、これにスケジュールやタスクの管理を任せられるようになると、システム手帳ではオーバースペックです。ですので私は、手帳は持たずにあくまでメモ帳というツールを使おうという姿勢を固めたわけですが、このメモ帳も百花繚乱という具合でなかなか一つに絞り込むことが難しいです。

もちろん最右翼はモレスキンです。
なんと言ってもこの高級感がたまらないです。ハードな表紙もすごくお気に入りですし、種類が豊富なのも良いです。
難点は価格が高いことと、ペンの種類によっては裏移りしてしまうことと、ルールドの場合罫線の幅が漢字を書くには狭いことでしょうか。それに非常に人気なので、他人とかぶる可能性が高いのも難点といえば難点です。

これまでもラージ版やポケット版など様々な種類のものを使ってきました。しかし、ラージ版はやや大きすぎて、手ぶらでちょっと出かける際に面倒になって持ち歩かなくなってしまい、泣く泣くやめました。ポケット版は逆に小さすぎて、書く際にスペースが狭いのが気になる点でした。

悩んでいた私が昨秋に出会ったが、ミドリ社のMDノートです。

「書くことにこだわった」というコンセプト通りの上等な紙質、文庫版・新書版・A5版・A4版という豊富なラインナップ、文庫版は630円という素敵な価格設定、Made in Japanの安心感。

銀座の伊藤屋で思わず小躍りしてしまうほど嬉しい出会いでした。すぐさま方眼罫の文庫版ノートを手にレジへと走った次第です。
現在私はこれに専用の革製カバーをかけて使用しています。

まだまだ模索中ではありますが、とりあえずはこのMDノートにメモを任せています。

現在はニーモシネ、MDノート、モレスキンの三者を併用しているのですが、その使い分けについてはまた後日に記したいと思います。

iPhone3GにおけるEvernoteの不満


何度かこのブログにも書いているように、私は非常にたくさんの情報をEvernoteに入れています。
自宅にいるときや大学にいるときは、Macから難なくアクセスできるのですが、出先や移動中などではどうしてもiPhoneで情報にアクセスしたい場合が出てきます。

もちろんiPhoneのEvernoteアプリを使うことになるわけですが、いかんせん快適からはほど遠い操作性です。
確かに私がiPhone3Gの8GBという貧弱なハードを使用していることが主な原因なのでしょうが、それにしても遅いし、操作中に落ちることも珍しくありません。PDFファイルを読む際などは、1分以上待たされることもあります。

Evernoteがすばらしいサービスであることは重々承知しており、そのためにできるだけ一極集中して大量のデータを入れ込んでいるのですが、こうもiPhoneでの操作性が悪いと、これらの情報を活用しづらいのが現状です。

ほかのアプリならともかくメモアプリは起動や操作の速さが非常に重要な要素であると思います。特に移動中にメモを確認したい時というのは、十中八九急ぎに決まっているわけです。その要求を満たしてくれないのは、非常に残念です。

このために3GSに買い換えようかとも考えたのですが、噂によると今年中に新しいiPhone(0S 4.0?)が出るとの話なので、しばらくは様子を見ようと思います。

Dropboxは3Gでも悪くないスピードが実現できているので、Evernoteでも同様のスピードで操作できるようになることを切に願います。

2010年2月7日日曜日

東郷雄二2009『新版 文科系必修研究生活術』を読む


私はこの本の主なターゲット層にまさにドンピシャリな文科系大学院生なので、非常に興味深く読ませていただきました。
よく練られており、内容もうまくまとめられていて、参考になる部分も多くありました。

本書は文科系研究者の望ましい研究姿勢とはどのようなものなのかを至極具体的に記したもので、ターゲットは大学生3,4年生、大学院生などの将来研究者を志望している人々です。ターゲットから外れる一般の人々にとってはそれほど面白い内容ではないかもしれませんが、学生の立場では参考になる点が多々あり、後輩たちにも自信を持って勧められる1冊です。

まずは目次から確認してみましょう。

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はじめに

第1章 研究生活入門
 研究とはなんだろうか
 研究者になるための適性
 転向のすすめ
 クロスオーバーのすすめ

第2章 研究環境をつくる
 指導教員の必要性
 指導教員の選び方
 研究の仲間を作る
 研究仲間の作り方

第3章 研究テーマを選ぶ
 研究テーマの選び方
 研究テーマに出会うには
 何がよい研究テーマか
 短期的テーマと長期的テーマ

第4章 研究方法のAからZまで
 先行研究の重要性
 文科系の研究におけるテクスト相互関係
 選考研究探索の方法
 研究カードを取る
 研究カードに何を書くか
 研究カード作成の方法
 文献カードを作る

第5章 研究のための読書術
 自分で買うか、図書館で借りるか
 読書の記憶を残す
 全部読むか、拾い読みするか
 アンテナを張る
 ブラウジングのすすめ
 論文の保管と管理
 コピーした論文は読む

第6章 図書館活用法
 図書館を活用する
 図書館で勉強する
 文献を探す

第7章 論文を書く
 論文とは何か
 先行研究の批判検討
 情報をくみかえる
 自分の問題を設定する
 問題解決のための調査・実験
 アウトラインを作る
 論文の論理構造
 論文の書式
 論文執筆の実際

第8章 文科系研究者のためのパソコン術
 私の機械遍歴
 文章を書く ーワープロとエディタ
 文章の構想を練る ーアウトライン・プロセッサ
 研究カードを作る
 データベース・ソフト
 文献管理ソフト
 パソコンを使って論文を書く

第9章 学会発表をする
 学会活動の意味
 博士課程になったら学会発表が中心に
 発表を申し込む
 発表原稿を作る
 発表の準備
 プレゼンテーション・ツールを使う
 発表の構成
 発表のやり方
 論文を投稿する
 どのような雑誌に投稿するか

第10章 研究者のための留学術
 いつ留学するか
 留学の目的をはっきりさせる
 どうやって留学するか
 留学情報の集め方
 留学まで

第11章 就職先を見つける
 指導教員の紹介
 公募に応募する
 公募に応募するときの注意
 就職するにはどうすればよいか

おわりに
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お手本のような目次だと一目見て思いました。
この本のどの部分にどのような内容のものが記されているかが、一目瞭然です。
目次を読んだだけでどのような内容の本か、著者の主張はどのようなものかが分かるというのは良書の条件の一つでありましょう。

また著者は本書の「はじめに」の部分で、本書を著した動機を3つ示しています。
1つは、近年増加傾向にある大学院生や彼らを指導する教授の手助けをしたい。
2つは、学部時代に受動的な知識吸収をしていた学生が、大学院において能動的に研究を進める際に役立ちたい。
3つは、学問研究の広い部分が神秘などでなく、伝達可能な技術であることを示したい。

読者はこの目次と「はじめに」を読んで、著者の立場と主張の概要をはっきりと捉えることができます。
非常にリーダーフレンドリーな本の好例であると言えるでしょう。


記述されている内容自体に目新しいものは多くないのですが、パソコンの利用を積極的に奨励している点や、自らの知的生産術を惜しみなく開陳している点などは好印象です。普遍的なものではなく(研究生活術に普遍的なものなどないのかもしれません)、個別具体的な手法を紹介している点は梅棹忠夫の『知的生産の技術』を彷彿させるものがありました。


論文の論理構造の章では、論文を執筆する際にいかに文章を組み立てるかということが記されているのですが、そこでもいくつか興味深い記述がありました。

私も院生のはしくれなので、論文に関わるおおよそのことは理解しているのですが、それを明確に形にすることは難しいものです。
著者はわかりやすい形で、序論・本論・結論に何を書くべきなのかを説明してくれます。

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序論
 問題の設定:その論文でどのような問題を扱うか
 問題の背景:なぜその問題を扱うのか
 先行研究の状況:その問題にはどのような先行研究があるか
 問題へのアプローチ方法:どのような方法でその問題を扱うか

本論
 先行研究の批判的検討
 問題点の摘出
 問題点を解決するための調査・実験の説明
 調査・実験の結果の提示
 調査・実験の結果の吟味
 どれだけの問題を解決できたかの批判的検討

結論
 最終的に得られた結論の提示
 結論をもう一度問題全体に置き直してその意義を検討
 この研究の限界を指摘
 残された問題点と将来の展望を提示
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本書は体系的に叙述されていて、読みやすい良書だと思います。

こういう本の効果的な利用の仕方は、紹介された手法を一度自分で試してみて、採用するかしないかを考えることでしょう。すべてが自分にフィットするわけがないので、真似すべきところだけを真似するという戦略でいきたいと思います。

2010年1月28日木曜日

メモについて考えること


私はメモ魔と呼ばれるほどではありませんが、それでもメモ帳は肌身離さず身につけています。
コンビニにちょっと買い物に行くときも、トイレに行くときも携帯し、部屋にいるときも常に手の届く場所にメモ帳が置いてあります。


それはなぜか。答えは当然のことながら、いついかなる場合でもメモをとるためです。

以前は、メモをとる姿勢を話し手にみせることによって、話し手を真剣にさせることが肝要だと指摘しましたが、今回は別の角度から「メモ」というものについて少し考えを巡らせてみたいと思います。


まず、最も重要なのはメモの内容です。「何をメモするのか」ということですね。
これには大きくわけて二つの種類があると思います。

一つは、インプット情報です。
つまり、外界から入ってくる情報を(本当にすべての情報を記すわけにはいかないので)選別して、それをメモ帳に書き記すのです。
これにはタスクリストや予定、連絡先、住所などが挙げられ、覚えきれない情報を忘れないためにメモをするものです。

もう一つは、アウトプット情報です。
これは何らかの刺激に対する自らの反応を記すことです。
講演会に行った感想や書評、会話によって得た着想などがこの領域に含まれます。

「メモ」についての話をするときは、どうもインプット情報をいかに効率的に処理するかという点に重心が置かれがちです。
たしかにメモがインプットの機会に数多く活躍することは事実でしょう。私も院生という立場上、教授との会話の最中に突然重要な情報が飛び出した際に、それらを適切にキャッチするべくメモする事が多々あります。


しかし、メモにはインプットと同様に重要なアウトプットの側面もあることを私は指摘したいと思います。

人はいろいろな事を日常的に考えますが、それらは具体的なものではない場合が多いので、すぐに忘れてしまい、忘れたことにすら気づかないことが多々あると思います。

そういった日々の着想もメモ帳があるだけで、一気に具体性を帯びたものに昇華されます。
書くことによって思考がまとまりますし、以前に自分が考えていたことを振り返ることによってさらに思考を発展させることが可能になるからです。

過去の思考メモが効果的に保存されていることは、とても重要です。なぜなら現在の自分だけでは答えが出ない問題を解くのに、過去の自分の思考回路が有用であることがあり得るからです。たとえ直接の解決でなくとも、考えるヒントになることは多くあると思います。現在の問題に、過去のあらゆる時点における「自分」を総動員して対処するという構図が生まれることになります。

この構図を実現させるためには、メモを効果的に保存している必要があるのですが、それはまた別のお話。

2010年1月20日水曜日

外山滋比古2009『忘却の整理学』を読む


帯にある「『思考の整理学』待望の続編!」という文句に惹かれて買ってしまいました。

『思考の整理学』はとても良い本で、参考になる箇所が多くあったので、その続編はいかなるものなのかと期待に胸をふくらませていたのです。

結論から言うと、いささか残念でした。期待外れと言っても過言ではありません。

本書は3部構成になっており、そのそれぞれに10頁弱のエッセイが8本前後おさめられています。まえがきにもあるように、「忘却論ではなく、忘却をめぐるエッセイを集めたもので、一篇一篇は、ほぼ独立している」形態をとっています。

したがって、前節における結論が後節における前提となるといった論理展開はなく、ただつらつらと「忘却」をめぐるあれこれを述べていくという形で本書は展開しているのです。

この形が悪いというわけではないのですが、正直に言って私にはとても退屈なものでした。「記憶とともに忘却も大切にしないと知的活動に支障をきたす」という主張がありとあらゆるところに繰り返しでてくるので辟易としてしまいました。

確かに「忘却」というこれまで軽視されてきた知的活動の一側面に光りを当てる興味深い試みではあったと評価することはできます。ただ、それにもかかわらず脳科学的な裏付けなどがなかった点は残念でした。

あまり期待しすぎると肩すかしをくうという好例でした。

2010年1月17日日曜日

ノートを取るならニーモシネ


大学院生として生活している私は、比較的ノートを取る機会が多いと思います。


そこで今回は私流のノート術(準備編)をお送りしたいと思います。




まず、使うものは
ノート・・・マルマン社のニーモシネ(A4横、5mm方眼)

ボールペン・・・シュナイダー社のスライダー

以上の二つです。
色ペンや他の文具は、ノートを取るときには使いません。

記憶の女神の名前を冠したニーモシネの良い点は二つです。
まず、紙にすごく上等なものを使っており、書き味が気持ちいいです。
あと、ミシン目が入っており、これに沿って手で切るとちょうどA4になるという特性があります。
私はノートを取ったらすぐに切り取ってScanSnapで読み込んでしまうので、このように簡単に切り取れる工夫があるととても助かります。

すごく単純な事なのですが、この上の二つの条件を満たすノートは意外と見つからないものなのです。


ボールペンはニーモシネの書き味を最大限に活かせるために、滑るような書き心地のシュナイダー・スライダーを使っています。

この二つが現時点における、ノート取りの最強タッグであることは間違いないです。
いつ使い切っても困らないように、両方とも自宅や大学にいくつもストックが置いてあります。

これらのツールを使って何をどのように書くのかという点については、後日に詳述したいと思います。

2010年1月11日月曜日

スターバックスに通う日々


私の通っている大学の中にはスターバックスがあります。

勉強しながらホットドリンクを飲むのが好きな私としてはすごくありがたい話です。

そして一回ハマると、ひたすら同じものを注文してしまうという性も手伝い、最近は「いつもの」が使えるようになってきました。

私の「いつもの」は、「抹茶ティーラテ」。

「ティー」の部分が重複している感のある、不思議なネーミングの飲み物です。
わりと甘めで、抹茶の香りが心地いいです。

毎日行っているので、必然的に店員さんとも仲良くなるのですが、
数日前に衝撃的な情報を耳にしました。


それは、抹茶ティーラテに入れるミルクの量は注文の際に調節が可能であるというものです。


そもそも作り方を知らないのに、ミルクの量の注文などするはずがないと思うのは私だけでしょうか。

ともあれ今日は、通常お湯とミルクが半々のところを全部ミルクで作ってもらいました。


これがなかなかどうして、かなりおいしいです。
店員さんには感想とお礼を伝えたついでに、今度から「いつもの」はこれにしてくれるようにお願いしておきました。

もし機会があればお試しあれ。

2010年1月10日日曜日

ペンケースあれこれ


私は文房具に凝るのが好きで、筆記用具などはしょっちゅう買い替えています。
色々試していくなかで、自分にフィットしたものを見つけるのが楽しいのです。

そんな中でもペンケースは比較的世代交代のサイクルが遅いものです。
何故なら、筆記用具などに比べて、どれも似たりよったりに感じるからです。

ペンケースに私が求めるもの。それは機能性とデザインです。当然ですね。

機能性には、出し入れのしやすさ、収納量、持ち運びやすさなどがあげられます。
デザインも重要です。デザインの優れたものは使っていて良い気分になりますし、また使いたくなるものです。モレスキンがその好例です。


ところでペンケースにはどのような種類があるのでしょうか。
私がこれまで使ってきたものは、大きく分けて箱形、巻き形、ポーチ形に分かれます。


箱形は言わずとしれたペンケースの中で最も基本的な形態だと思います。
小学生の頃、まわりではこのタイプのものしか見なかったように記憶しています。

この形態の利点はなんといっても頑丈さです。
一昔前は、サンスターの「象が踏んでも壊れない筆箱」というキャッチコピーが流行しました。
象に踏まれる機会があるかどうかは疑わしいかぎりですが、時間が経ってもキャッチコピーが忘れられていないというのは広告戦略としては大成功でしょう。
箱形のデメリットは、ハードケースゆえに、ペンの量に関係なく一定の体積を有していることです。
ペンを数多く持ち歩かない人にとっては、鞄の中で強い存在感を放つ箱形は疎ましいものなのかもしれません。


ポーチ形はペンケースの中では最もポピュラーな存在と言えるでしょう。
大学生になってまわりを見渡すと、ほとんどの人はこの形態のものを使っているように思えます。

この形態の利点は、ソフトケースであるために持ち運びやすく、鞄にもおさまりやすい点です。
また大きさやデザインのバリエーションが多いのも良い点でしょう。
ただ、汚れやすいことと、中のものを強い衝撃から守ることができないことが残念な点です。


巻き形はやや変化球です。
なかなか使っている人は見ませんが、たまに見かける人は120%ぐらいおしゃれに見えてしまうのが不思議です。

これの良さはなんと言っても、そのデザインです。一目置かれること間違いなしです。
あと個人的には、紐を解いてケースを広げるという所作に心躍るものがあります。
難点はペンを収納できる量がかなり限られることです。
また何本もペンを収納していくとどんどん立体的になってきて、かさばってしまうという点もあげられます。


さて、いくつかペンケースを見てきましたが、私が現在使っているのは写真に示したような箱形のものです。
確かにかさばるという弱点はあるものの、それを補ってもあまりある頑丈さと収納量、そしてデザインに惚れました。

イレモンヤという私のお気に入りの店で購入したものです。
モレスキンと同じように開け閉めにゴムバンドを使うタイプのものです。
私にとって、この開閉に伴う手間はちょっとした儀式のようなもので、これを行うことでちょっとテンションがあがるわけです。

2010年1月8日金曜日

MobileMe不要論


いつも意識している事ですが、最近になってまた情報の管理方法の検討に熱をあげています。

具体的には、カレンダーやアドレス帳、タスクやブックマークといった情報をいかにして管理・活用するのかというものです。

完璧な管理術というものはきっと存在しません。ある時点において、自分にフィットした手法を採用するというの限界でしょう。

しかしネット業界は日進月歩の発展を続けており、常に情報が更新されている状態です。そのような中である時点のベターな手法にいつまでもしがみついていることはあまり賢明とは言えないと私は考えます。

したがって私は、半年に一回ほどのペースで現状の見直し→新たな手法の模索→試用→採用というサイクルをまわしています。

その結果、結局いままで使っていたものが一番よかったという結論に落ち着くことも多々ありますが、それはそれで良いのです。

対抗勢力を知ることで、自らの採用している手法により磨きがかかることもあります。

半年経ったけれどもいまだに牙城を崩すほどの対抗勢力は現れていない、と自信を持って言えることも大切だと思います。


これまでは、
アドレス帳、ブックマーク、キーチェーン、辞書・・・MobileMe
タスク・・・Omni Focus(同期にはMobileMeを使用)
カレンダー・・・Googleカレンダー

という状況だったのですが、無料のGoogleのサービスが充実してきたことにより、年間9800円も必要なこのシステムを見直そうと考えました。

色々調べてみると、Googleの各種サービス(カレンダー、連絡先、キーチェーン、ブックマーク)とDropbox(ファイル同期、辞書同期)とToodledo(タスク)でMobileMeのほとんどすべてのサービスがカバーできてしまうという事実が判明しました。

MobileMeでしかできないことには、「iPhoneを探す」と「どこでもMyMac」が挙げられます。

これに関しては、前者は生粋のMacユーザである父のMobileMeに私のiPhoneを追跡してもらうことで解決しました(この体制だと私の居場所が父に筒抜けですが、この際目をつむりましょう)。後者の「どこでもMyMac」は私の使用環境ではまず必要のないものなので、これがなくなってもダメージはないと考えました。

いずれにせよ、無料が基本となってきているWebサービスの中で、年間9800円も払い続けるメリットがMobileMeにはないと私は判断したわけです。

2010年1月7日木曜日

IE vs Firefox vs Safari vs Chrome


最近、インターネットブラウザについて悩んでいます。

何を標準として使うか、という問題なのですが、どれも一長一短な感じがして、なかなか一つに絞りきれません。

IE・・・windowsを使っている頃にはよくお世話になっていました。しかし昨今のブラウザ競争の中で新興勢力に対抗しきれず、シェアを落としています。速度やデザインなども今ひとつで、私にとって魅力的には見えません。

Firefox・・・IEの次にシェアを有するのがFirefoxです。速度もデザインもなかなか良いのですが、ブックマークの同期方法が結局分かりませんでした。きっとやり方はあるのでしょうが、簡単にはできなさそうです。ただ、表示のフォントを自在に変更できるため、webページを非常に見やすいものにできます。

Safari・・・Macを使ってからずっとこれをブラウザに使用していました。優れた点としては、MobileMeとの連携が緊密なところです。ブックマークの同期などはすべてMobileMeを利用することによって、可能になります。ただ残念なのは、新しいページを開くと、タブではなく、新しいウィンドウで開いてしまう点です。いくつものwebページを閲覧しているときに、この機能は非常に煩わしく感じられます。また、複数のタブを常時表示させることができないのも減点対象でした。

Chrome・・・現在の標準ブラウザです。まだ使い始めて間もないので、今後どのような弊害が出てくるかは分かりませんが、今のところ速度も安定しており、満足です。ブックマークをブラウザ上で無料で同期できるのも素晴らしいです。しかし、サービスを提供して間もないためか、いまだに搭載されていない機能(フォント設定など)があり、こういった点は今後に期待するところです。


結局は様々あるブラウザのうち、どれが優れているのかというよりは、どれが自分の要求に応えてくれるのかが重要であると思います。

私はブラウザにはデザインの良さと速度だけでなく、使い勝手(特にタブとブックマーク)を強く求めています。そのために今はChromeに落ち着いていますが、今後何を使うかは分かりません。

マイコミジャーナルによればIEなどがシェアを落としていく中で、徐々にではありますが確実にChromeが存在感を増してきているようです。

このように競合同士が切磋琢磨してくれることは、そのサービスを享受するユーザーにとっては喜ばしいことであるようにも思います。


12月のブラウザシェア - ChromeがSafari抜く、Firefox 3.5は3位 | エンタープライズ | マイコミジャーナル

2010年1月2日土曜日

新年をむかえて


気がつけばもう2010年の1月2日です。

光陰矢の如しとはよく言ったもので、年齢を重ねるにつれて、月日の流れを早く感じるようになっている気がします。

この時間の流れに飲み込まれずに、主体的に動くためには目標を明確に打ち立てて、そこにいかにして到達するのかという冷静な見通しが必要になってくると思います。


そこで、今日は新年の目標を設定したいと思います。

・査読誌に論文を投稿&採用

・修士論文作成

・博士論文のテーマ設定

この3つが2010年の私の重要課題です。


また、生活面では、

・素直&誠実であること(自分に対しても、他人に対しても)

・このブログを1年間続けること

・運動を週1回はすること

・1日に論文1本か書籍1冊は読むこと

・映画は週1本以内におさえること

・毎日少しでもいいので英語&フランス語&アラビア語の勉強をすること

・体重を60kg未満にすること


やりたい事は、

・Boojilさんの個展を見に行く

・ラーメンズのライブを見に行く

・今治市にタオルを買いにいく

・普通免許をとる

・車を購入する

全ての項目を達成できるとは思いませんが、なるべく努力したいと思います。