2010年2月21日日曜日

内田和成2006『仮説思考』を読む


本書は経営コンサルタントとして長年活躍してきた著者がそのノウハウを「仮説思考」に焦点を絞ってまとめたものである。

最近著者の『論点思考』が出版されたようで、書店で両者が隣り合って平積みされていたので手にとって見てみました。内容はとても面白そうであったので、より自分の問題意識に近い『仮説思考』を購入しました。読み進めていくといよいよ面白く、買ったその日に一気に読み切ってしまいました。

本書の章構成は以下のようになっています。

序章 仮説思考とは何か
 情報が多ければ正しい意志決定ができる?
 早い段階で仮説をもてばうまくいく
 現時点で「最も答えに近い」と思われる答え
  仮説思考を身につけるために

1章 まず、仮説ありき
 なぜ仮説思考が必要なのか
 先見力と決断力を支える
 情報は集めるよりも捨てるのが大事
 大きなストーリーが描けるようになる

2章 仮説を使う
  仮説をもって問題発見・解決に当たる
 仮説・検証のプロセスを繰り返す
 仕事の全体構成を見通す
 人を動かすのに必要な大局観

3章 仮説を立てる
 コンサルタントが仮説を思いつく瞬間
 分析結果から仮説を立てる
 インタビューから仮説を立てる
 仮説構築のためのインタビュー術
 仮説を立てるための頭の使い方
 よい仮説の条件
 仮説を構造化する

4章 仮説を検証する
 実験による検証
 ディスカッションによる検証
 分析による検証
 定量分析による検証

5章 仮説思考力を高める
 よい仮説は経験に裏打ちされた直感から生まれる
 日常生活の中で訓練を繰り替える
 実際の仕事の中で訓練する
 失敗を恐れるな

終章 本書のまとめ
 仮説の効用
 気持ち悪くても結論から考える
 失敗から学ぶ
 身近な上司・同僚・友人を練習台にする
 枝葉ではなく幹が描ける人間になろう


非常に体系的なまとめ方がなされていて、読みやすい印象を読者に与える好例です。


本書における著者の主張を一言で言ってしまえば、
「何事も仮説思考を用いて対処せよ」
ということになるかと思います。

本書のテーマはとして著者が掲げているのは、以下の4点です。
・仮説思考を見つけることによって、どんなメリットがあるのか?
・どうしたら仮説を構築することができるのか?
・立てた仮説を検証し、進化させていくにはどうしたらいいのか?
・仮説思考力を高めていくには日常どんなことをしたらいいのか?

これらはそれぞれが2〜5章の内容に相当しています。


仮説思考について詳述することがここでは避けますが、端的にその特徴をまとめると、
① 資料収集や分析に取りかかる前に、まず仮説を構築することで、
② 作業量や作業時間を節約できるだけでなく、
③ 全体像を把握できて軌道修正も容易になり
④ 仕事を効果的に進められるようになる。
といったところでしょうか。


特に私が興味を惹かれたのは、著者が「仮説が先。分析は後。」と繰り返し主張していることです。

何かの問題に立ち向かう際は、問題になっている可能性のあるものに関するデータを極力多く集めてから処置を下したいと思うのが普通ではないでしょうか。しかし、著者はそのような「網羅思考」では作業量が甚大なものになるだけで、本質を捉えることはできず、時間切れになることが多いと主張します。不完全な情報しか集まっていなくても、まずスタート地点で一定の仮説をたて、それを検証するために分析をするのが適切な手順なのだと言うのです。

確かに可能性のあるものをすべて集めようと思うと、タスクは無限に近い増殖を見せることでしょう。情報が多ければ適切な判断を下せるというのは誤りです。情報を増やせば増やすほど、どうしてもノイズが入りこんでしまい、本質的なことはかえって見えづらくなってしまうのではないでしょうか。情報の贅肉をそぎ落とし、必要最小限の分析で済むような効果的な仮説を立てることこそが重要なのだと気づきました。

私の属する学術分野でも帰納か演繹かという話にはよくなるのですが、往々にして帰納法的な論理展開が多くなってしまいます。もっと仮説演繹的な思考を血肉とすることで効果的な議論ができるようになりたいものです。

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